マーリを一言でいうと
ブルキナファソなど西アフリカで、バオバブの木(Adansonia digitata)の種を発酵させて作る調味料です。かたい種を1日半ゆで、かごで寝かせ、ついて形にしてもう一度寝かせ、蒸してから干します。黒っぽい茶色で、ねばりがあり、においが強いのが特徴です。
| どこで | ブルキナファソなど西アフリカ |
|---|---|
| 何から | バオバブの種(殻をむかずに使う) |
| 寝かせる時間 | かごで72時間。ついて形にして、さらに約24時間 |
| 働く微生物 | 始めは枯草菌(Bacillus subtilis)が多い。あとから乳酸菌のエンテロコッカスも |
| 納豆との違い | 種を灰汁を入れて約36時間ゆで、つぶして形にし、蒸して干す |
食べ方: ソースやスープの味付けに
2011年の論文(African Journal of Biotechnology 誌)は、マーリを、アフリカのいくつかの国で、ソースやスープなどの料理の味付けに使う調味料と書いています。買う人がマーリのよしあしを見分ける一番の決め手は、強いにおいだそうです。2015年の論文(International Journal of Food Microbiology 誌)は、西アフリカの国々で、毎日何百万人もが食べていると書いています。
研究者が比べるために買ったのは、ブルキナファソの村トゥルフェで売られていた、干して食べられる状態のマーリでした。作り手によっては、仕上げに軽く炒って、独特の風味をつけることもあります。マーリを使う料理の、材料と手順まで書いた作り方は、このページを書いた時点で見つけられませんでした。
作り方の記録
2011年の論文は、ブルキナファソのゾルゴにある村プスギンで、3人の作り手に、それぞれのやり方でマーリを作ってもらいました。作り方はおおよそ次のとおりです。
- バオバブの種をきれいにして、約36時間ゆでる。24時間たったところで、やわらかくするために灰汁(灰を水に溶かしたアルカリの液)を入れる。
- 水を切ってかごに移し、そのままの温度(30〜35℃)で72時間、自然に発酵させる(1回目)。
- 発酵した種をつき、灰汁をさらに足しながら形にする。
- そのままの温度で約24時間、もう一度発酵させる(2回目)。
- 蒸してから、干す。
同じ論文は、ロカストビーンから作る西アフリカの調味料(スンバラなど)と違い、マーリはゆでた種の殻をむかずに発酵させる、と書いています。バオバブの種がかたいので、発酵の前に36時間も煮込む必要があるそうです。2015年の論文は、材料として、灰、井戸の水、かん水を調べています。
納豆と比べると
2010年の研究(International Journal of Food Microbiology 誌)は、ブルキナファソの4か所のマーリを調べました。発酵を始めるのは、納豆と同じ枯草菌で、見つかった菌(空気のある所で育つ菌)の82%を占めました。発酵の始めに乳酸菌はいませんでしたが、24時間たつとエンテロコッカス(Enterococcus faecium)が現れ、終わりまで残りました。2013年の研究は、マーリをアルカリ性の発酵でできる調味料と書き、枯草菌の酵素が、望ましい食感や風味、pH を作ると書いています。
枯草菌で、アルカリ性に進み、ねばりが出るところは、納豆とよく似ています。違うのは、材料が豆ではなく木の種であること、灰汁を入れて1日半ゆでること、発酵を2回に分けること、ついて形にしてから蒸して干すことです。同じブルキナファソで、ロゼルの種から作るビカルガも、長くゆで、2回発酵させ、蒸して干します。見比べてみてください。
菌とにおいの研究
2011年の論文は、マーリのにおいのもとを調べ、96の成分を見つけました。ゆでただけの種では1kgあたり121.6mgだったにおいの成分が、発酵のあとは809.1mgに増えました。ところが干すと、そのうち最大80.7%が失われました。
2012年の研究は、マーリの枯草菌の中に、ほかの菌をおさえる物質を作る株があることを見つけました。2018年の研究は、カビをおさえる力を目安に、マーリ作りの種菌にする Bacillus を40株から選んでいます。一方で2015年の研究は、自然に任せる発酵なので、食中毒を起こすことがあるセレウス菌(Bacillus cereus)がときどき入ると書き、作り方の衛生の決まりと種菌づくりが、安全なマーリにつながるとしています。このサイトでは、体への効き目は書きません。
記録に残る、バオバブの木
英語版ウィキペディアによると、アフリカのバオバブは、サハラより南の乾いた暑いサバンナに生え、放射性炭素で調べて1275年以上生きている木もあります。実は厚い殻に包まれ、中の果肉は乾くとほろほろの粉になります。種はかたく、火にあぶられるか、動物のお腹を通ってからでないと芽を出しにくいそうです。「バオバブ」という名前は、「種の多い実」を意味するアラビア語から来たのではないか、と書いています。
出典
- Parkouda C ほか (2011) Volatile compounds of maari, a fermented product from baobab (Adansonia digitata L.) seeds. African Journal of Biotechnology 10(20):4197-4206. https://www.ajol.info/index.php/ajb/article/view/93608
- Parkouda C ほか (2010) Microorganisms associated with Maari, a Baobab seed fermented product. International Journal of Food Microbiology 142(3):292-301.(要旨のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20688411/
- Kaboré D ほか (2012) Bacteriocin formation by dominant aerobic sporeformers isolated from traditional maari. International Journal of Food Microbiology 154(1-2):10-18.(要旨のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22240061/
- Kaboré D ほか (2013) Inhibition of Bacillus cereus growth by bacteriocin producing Bacillus subtilis isolated from fermented baobab seeds (maari) is substrate dependent. International Journal of Food Microbiology 162(1):114-119.(要旨のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23376785/
- Thorsen L ほか (2015) Characteristics and phylogeny of Bacillus cereus strains isolated from Maari, a traditional West African food condiment. International Journal of Food Microbiology 196:70-78.(要旨のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25528535/
- Kaboré D ほか (2018) Rapid screening of starter cultures for maari based on antifungal properties. Microbiological Research 207:66-74.(要旨のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29458870/
- Wikipedia "Adansonia digitata" https://en.wikipedia.org/wiki/Adansonia_digitata
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
