トゥオンを一言でいうと
ベトナムの、大豆の発酵調味料です。炒った大豆を水につけ、カビを生やしたもち米と塩水を合わせて、陶器のかめで日に当てながら寝かせます。北部フンイエン省の村で作る「トゥオン・バン」がよく知られています。名前は漢字の「醤」から来ていて、つけだれにも、煮物の味付けにも使います。
| どこで | ベトナム(北部のフンイエン省バン、ハノイのクダ、中部ゲアン省のナムダンなど。南部では「トゥオン・ホット」と呼ぶ) |
|---|---|
| 何から | 大豆、もち米、塩、水 |
| 寝かせる時間 | かめで日に当てて少なくとも2〜6か月。2年がよいとする記録も |
| 働く微生物 | ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae) |
| 納豆との違い | 塩を入れ、カビの生えたもち米で何か月も寝かせる |
食べ方: フナと青いバナナを8時間煮る「カー・ジエック・コー・トゥオン・バン」
ベトナムの家電量販店「ディエンマイサイン」の料理のページは、フナ(カー・ジエック)をトゥオン・バンで煮る家庭料理を載せています(2人分。下ごしらえ30分、煮る時間8時間)。ごはんがすすむ、ベトナムの家のおかずだと書いています。
材料(2人分)
- フナ 500g
- 青い(熟していない)バナナ 3本
- トゥオン・バン 100ml
- 砂糖・塩 少し
作り方
- フナを洗い、えらを取り、ひれと尾を切って、腹から大腸を抜く。ほかのはらわた、とくに胆のうは残す(小さな苦みが、煮込むとトゥオンのこくになじむそうです)
- フナを塩でよくもんでから洗い、水気をしっかり切る
- バナナの皮をむいて両端を切り、横に浅く切れ目を入れて、色が変わらないよう塩水に10分つける。斜めに切り、また塩水に戻す
- 鍋の底にバナナを並べ、フナをのせ、残りのバナナで上をおおう。砂糖大さじ1をふり、トゥオンを魚がひたひたになるまで注ぐ
- 中火にかけ、煮立ったら弱火にして、7〜8時間ことこと煮る
英語版ウィキペディアは、トゥオン・バンやクダのトゥオンを、ゆでた空心菜(ラウ・ムオン)につけて食べると書いています。ベトナム語版ウィキペディアには、トゥオン・バンが出てくる古い歌も載っています。「故郷を離れても、空心菜のスープを思い出す。トゥオンに漬けたなすを思い出す」という歌です。
作り方の記録
ベトナム語版ウィキペディアは、トゥオン・バンの作り方を次のように書いています。材料は、フンイエンで育った大豆、もち米、白い塩です。大豆は甘みとこくが出るように、この土地の物を選ぶそうです。
- もち米をふるって小石を取り、研いで30分ほど水につける。蒸して、平たい竹のざるに広げ、竜眼かいもの葉を一面に並べて、菜の花のような黄色いカビが生えるのを待つ。
- 大豆を砂と一緒に弱火で炒る。中まで火を通し、黄色く香ばしくする。
- 炒った大豆を挽き、ちょうど7日7晩、水につける。短いと酸っぱくなり、長いと傷むので、多くも少なくもしない。
- 大豆をつけた水と、カビの生えたもち米を合わせ、よくもみ混ぜる。こした塩水で味をつけ、全部を陶器のかめに入れる。
- かめを日に当てて、少なくとも2〜6か月、よいのは2年寝かせる。その間は毎朝、棒でかき混ぜる。
日差しが強いほどよいトゥオンになるので、3月から8月が村のいちばんの仕込みの季節です。できあがりは濃い茶色でとろりとしていて、においが強く、塩気と甘み、こくがあります。うまく作れば2〜3年もつそうです。
ベトナム語版ウィキペディアの「トゥオン」の項目は、作り方は土地ごとに秘伝があるとしたうえで、共通するのは、大豆を炒って砕き、黄色いカビの生えたもち米と合わせ、光の入らないかめに入れて日に当てること、とまとめています。
納豆と比べると
どちらも大豆から始まります。納豆は煮た大豆を塩なしで、枯草菌(Bacillus subtilis)で数日発酵させ、糸を引く粒に仕上げます。トゥオンは大豆を炒ってから挽き、ニホンコウジカビを生やしたもち米と塩水で、何か月もかめで寝かせます。日本の味噌に近い作り方ですが、麹を米ではなくもち米で作り、かめを日に当てて温めるところが違います。
記録に残る、トゥオン・バンの村
ベトナム語版ウィキペディアによると、トゥオン・バンは19世紀の終わりごろから名が知られ、フンイエン名物の竜眼と並んで、王に差し出す品でもありました。20世紀のはじめ、ハノイとハイフォンを結ぶ国道5号が通ると、商品として売られるようになりました。2022年、バンのトゥオン作りの協会には17の家が入っていて、そのうち5つの家は年に数千リットルを作ります。村全体では、年に200万リットルを超えるそうです。
同じ項目には、各地の名物を並べた言い回し「ラの漬け物、ランのなす、バンのネム、バンのトゥオン」も載っています。「トゥオン」の項目は、ベトナムの南部ではしょうゆのことを「ヌオック・トゥオン」と呼ぶので、トゥオンとしょうゆを分けて考える必要がある、と書いています。
出典
- Điện Máy Xanh「Cách làm cá diếc kho tương bần dân dã đậm đà hao cơm」 https://www.dienmayxanh.com/vao-bep/cach-lam-ca-diec-kho-tuong-ban-dan-da-dam-da-hao-com-07558
- Wikipedia(ベトナム語)「Tương Bần」 https://vi.wikipedia.org/wiki/Tương_Bần
- Wikipedia(ベトナム語)「Tương」 https://vi.wikipedia.org/wiki/Tương
- Wikipedia "Tương" https://en.wikipedia.org/wiki/Tương
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
