世界の納豆アトラスWeb版

トップ › 地域 › ヒマラヤ

Region · 2種

ヒマラヤの納豆

干して半年もたせ、戻し汁ごとスープにする。山の暮らしに合わせた、保存の納豆です。

ヒマラヤの納豆。本の地域挿絵

ヒマラヤの2種を一言で

ネパール東部から、インドのダージリン・シッキム、ブータンにかけての山あいでは、塩を入れずに大豆を発酵させる食べ物が作られてきました。名前は土地で変わり、ネパールとインドではキネマ、ブータン東部の日本語の資料ではリビイッパと書かれます。英語の資料には、ブータンのゾンカ語で「Lebe Yhitpa」と書いた記録もあります。

キネマネパール東部・インド(シッキム、ダージリン)・ブータン。塩なし。糸を引くが、日本の納豆より粘りは弱い。干して保存し、カレーやスープの具にする
リビイッパブータン。半分ほど煮た豆を竹の入れ物で発酵させる。カレーや、唐辛子とチーズのペースト「アゼ」に入れる

食べ方: 火を通して、スープとカレーに

日本の納豆のようにご飯にのせるより、火を通して料理に入れる食べ方が中心です。

  • 干したキネマのスープ — ネパールの食のサイト The Gundruk は、リンブーの家庭料理として「キネマ・コ・ジョル」を載せています。干したキネマを水で戻し、玉ねぎ・にんにく・ターメリック・トマトと炒め、戻し汁を捨てずに加えて煮ます。
  • 日本で食べられる記録 — 2022年11月の散歩の情報サイト「さんたつ」の記事に、東京・阿佐谷のネパール料理店が、キネマのスープの付く定食を出していると書かれています(今も出しているかは確かめていません)。
  • 唐辛子とチーズのペーストに — 2008年の本『Bhutan: Ways of Knowing』は、ブータンの発酵大豆はにおいが強く、いろいろなカレーや、粉唐辛子・チーズ・トマト・玉ねぎを混ぜる赤いペースト「アゼ」に入れると書いています。

作り方: 灰を混ぜ、葉で包み、干す

1985年につくば市で開かれた「無塩発酵大豆のアジアシンポジウム」で、ネパールの Tika Karki が報告したキネマの作り方です(記録集は1986年。Soyinfo Center の要約)。

  1. 大豆を一晩水に浸し、柔らかくなるまで煮る。
  2. 軽くたたいて割り、0.5%ほどの灰を手で混ぜる。
  3. バナナの葉をかぶせた竹かごに入れ、約25℃で一晩おく。
  4. 3日ほど天日で干すと、半年ほど保存できる。

ブータンについては、日本語版ウィキペディアが吉田よし子『マメな豆の話』(2000年)を引いて、数か月、長い物では1年を超えて取っておく納豆があり、仕込みに麹やチーズを使うと書いています。

同じ名前でも、国で菌が違う

2016年、シッキム大学の研究チームは、市場で買ったキネマの糸の長さを菌の株ごとに測り、1cmから23cmまで開きがあると報告しました。糸を作っていたのは枯草菌の仲間で、乳酸菌は反対に糸を分解していました。論文は、よいキネマの条件の1つに、食べる人が好む強い粘りを挙げています。

2022年の同じ大学の研究は、インド・ネパール・ブータンの干したキネマ18点を遺伝子で調べ、インドとネパールでは枯草菌(B. subtilis)が多く、ブータンの物は B. cereus と Brevibacillus borstelensis がはっきり多いと報告しました。

記録に残った順に

  • 1962年 — 民族学者の中尾佐助が、東ネパールで初めてキネマに出会った。1985年のつくばのシンポジウムで、本人がそう話している(記録集は1986年。Soyinfo Center の要約)。
  • 1985年 — 同じシンポジウムで、Karki がキネマの作り方を報告した。中尾は、ブータンでは発酵大豆を作る種に、酒を作る時と同じ種を使うという報告があると話した。
  • 2008年 — 『Bhutan: Ways of Knowing』の「ブータンの作物」の章(Karma Lhendup)が、大豆とインゲン豆のいちばん大事な使い道を、発酵させて Lebe Yhitpa にすることだと書いた。
  • 2024年 — シッキム大学の Tamang が総説で、キネマはネパール東部で生まれ、インドのダージリン・シッキムと、ブータンへ広がったと書いた。

あわせて読む

同じ東ヒマラヤの東側、インド北東部には、葉で包んで、炉やかまどのそばで寝かせる仲間が11種あります。インド北東部の納豆へどうぞ。

出典

  1. The Gundruk「Kinema ko Jhol (Ethnic Cuisine of Limbu)」2015年11月22日 https://www.thegundruk.com/?p=699
  2. さんたつ「阿佐ケ谷さんぽ=ネパール旅行?商店街に溶け込む南アジアの人々」2022年11月23日(取材・文 室橋裕和) https://san-tatsu.jp/articles/207195/
  3. Chettri R, Bhutia MO, Tamang JP (2016) Poly-γ-Glutamic Acid (PGA)-Producing Bacillus Species Isolated from Kinema, Indian Fermented Soybean Food. Frontiers in Microbiology 7:971. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4914496/
  4. Kharnaior P, Tamang JP (2022) Metagenomic-Metabolomic Mining of Kinema, a Naturally Fermented Soybean Food of the Eastern Himalayas. Frontiers in Microbiology 13:868383. https://www.frontiersin.org/journals/microbiology/articles/10.3389/fmicb.2022.868383/full
  5. Tamang JP (2024) Unveiling kinema: blending tradition and science in the Himalayan fermented soya delicacy. Journal of Ethnic Foods 11:29. https://link.springer.com/article/10.1186/s42779-024-00247-1
  6. ウィキペディア「納豆」(ネパール、ブータンの節。吉田よし子 2000『マメな豆の話』を出典とする記述) https://ja.wikipedia.org/wiki/納豆
  7. Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.1169 Karki 1986、No.1172 Nakao 1986、No.1882 Rennie & Mason eds. 2008 の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151

このページは、各納豆のページで開いて確かめた出典から、2026年10月15日にまとめました。料理・製法は記録の紹介です。

Official LINE

納豆の話の続きは、公式LINEで

公式LINE「50kgダイエットした主夫社長ひろくん」
このサイトを作っている田中啓之(ひろくん)の公式LINEです

友だち追加公式LINE「50kgダイエットした主夫社長ひろくん」のQRコードスマホで読み取ると
友だち追加の画面が開きます