インド北東部の11種を一言で
インドの北東の端の州々では、民族ごとに、塩を入れない発酵大豆が作られてきました。多くは、煮た大豆を土地の葉で包むか、葉を敷いた竹かごに入れ、炉やかまどのそばで数日寝かせます。枯草菌(Bacillus subtilis)の仲間が見つかった物が多く、糸を引きます。
| マニプル州 | ハワイザール(メイテイの人々。粒のまま。イチジクの仲間やバナナの葉を敷いた竹かごで3〜5日) |
|---|---|
| メガラヤ州 | トゥンリンバイ(カシ・ガロの人々。皮をむいて煮て、ラメットの葉で包み炉の上で3〜5日) |
| ミゾラム州 | ベカン(ミゾの人々。ヌフランやフナティアルの葉で包み、かまどの近くで3〜4日) |
| ナガランド州 | アクニ(スミ・ナガの人々など。発酵は夏3〜4日・冬1週間ほど) |
| アルナーチャル・プラデーシュ州 | ペルヤン(アパタニ。しょうがの葉)、チュクチョロ(西カメン県のシェルドゥクペン。冬は15〜30日)、ペロン・ナムシン(東シアン県のアディ。葉で包んで台所の棚に吊るす)、グレップ・チュルピ(タワンの市場で集めた記録) |
| アッサム州 | ベメルツ(ディマ・ハサオ県の山あいの食卓に) |
| トリプラ州 | ベゼイトゥ(研究者の一覧に名前が載る。記録は少ない) |
| 土地が資料で違う | ベカントゥ(ミゾラム・アッサム・ナガランドと、資料によって書く州が違う) |
食べ方で並べると
同じ発酵大豆でも、煮込む、つぶして煮詰める、火を通さずに混ぜる、と食べ方は州ごとに分かれます。
- 砕いた米と煮込む — マニプルのハワイザールは、野菜と煮るカレーや、砕いた米と煮込む「チャゲム・ポンバ」にします。
- つぶして、黒ごまと煮詰める — メガラヤのトゥンリンバイは、つぶして水気がなくなるまで煮て、炒めた玉ねぎ・にんにく・しょうが・唐辛子、すった黒ごまと合わせ、濃いカレーにします(Tamang 2015)。
- 塩・青唐辛子・トマトのカレー — ミゾラムのベカンは、そのまま食べるか、カレーにしてご飯に添えます。
- 燻製の豚肉と — ナガランドのアクニは、燻製の豚肉と煮る料理や、唐辛子と合わせる食べ方で知られます。
- 火を通さずに — アルナーチャルのペルヤンは、お湯と唐辛子と塩を混ぜて、炒めも煮もせずにご飯に添えます。Tamang(2015年)は、キネマのカレーとの違いとして、このことを書いています。
- ヤクのチーズのチャツネに — 西カメン県のチュクチョロは、すりつぶしたペーストを、地元の唐辛子・トマト・ヤクのチーズ・塩と合わせてチャツネにします(Singh ほか 2007)。
- ゆで野菜と、たけのこの発酵食品と — アディの女性たちは、ペロン・ナムシンを、何種類かのゆで野菜、地元の唐辛子、発酵させたたけのこ、塩と混ぜて食べます(同)。
- 米の食事に添える — アッサム州ディマ・ハサオ県の食事を調べた2026年の論文は、米が中心の毎日の食事に、ベメルツのような大豆の発酵食品が加わると書いています。
作り方: 包む葉が、土地ごとに違う
2011年のインドの雑誌 FriedEye の記事は、北東インドの発酵大豆は作り方がほぼ同じでも、その土地の天気・大豆の品種・かごの種類・包む葉・煮る水・菌の働きで、色・香り・歯ごたえが変わると書いています。記録にある包む物を並べると、次のとおりです。
- イチジクの仲間(Ficus hispida)かバナナの葉 — ハワイザール
- ラメット(Clinogyne dichotoma)の葉 — トゥンリンバイ
- ヌフラン、フナティアル(Phrynium 属)の葉、バナナの葉 — ベカン
- しょうがの葉 — ペルヤン
- バナナの葉と、温めた綿の布 — チュクチョロ
- クズウコンの仲間(Phrynium pubenerve)の大きな葉 — ペロン・ナムシン
寝かせる日数も、多くは3〜5日ですが、標高1981mのシェルガオンで作るチュクチョロは、冬に15〜30日と長くなります(Singh ほか 2007)。
記録に残った順に
納豆の歴史の文献を集めた Soyinfo Center が「最も古い文書」としている物を並べます(2012年1月時点)。
- 1906年 — シロンで出た『カシ語・英語辞典』が「tung rymbái」を「煮て保存した豆で、とても嫌なにおいがする物」と定義した(トゥンリンバイ)。
- 1967年 — 焼き畑の研究書がベカンを「大豆から作る食べ物」と書いた。ミゾラムで大豆が育てられていたことを示す、最も古い文書でもあるだろうとされている。
- 1980年 — マニプル州インパールの医科大学の研究者が、妊娠中の女性99人の食習慣の1つに「発酵大豆(ハワイザール)が好き」を挙げた。
- 2001年 — シッキムの Tamang が、キネマの近い仲間としてアクニ・ハワイザール・トゥランバイ・ベカントゥを挙げた(ベカントゥの最も古い文書)。
- 2003年 — ホイヌ・ハウゼルの料理本『The Essential North-East Cookbook』が「Akhuni」という言葉を使った(アクニ)。
- 2007年 — Singh・Singh・Sureja が、北東インドの民族の食べ物を調べ、チュクチョロとペロン・ナムシンの作り方と食べ方を書いた。
- 2009年 — Tamang らが、北東インドの女性が伝えてきた発酵大豆の知識をまとめた(ペルヤンの最も古い文書。2010年10月時点)。
- 2022〜2024年 — シッキム大学の研究者が、ベメルツ・グレップ・チュルピ・ベゼイトゥを含む、東ヒマラヤの発酵大豆の一覧と調査を続けて出した。
出典
- Tamang JP (2015) Naturally fermented ethnic soybean foods of India. Journal of Ethnic Foods 2:8-17. https://doi.org/10.1016/j.jef.2015.02.003
- Singh A, Singh RK, Sureja AK (2007) Cultural significance and diversities of ethnic foods of Northeast India. Indian Journal of Traditional Knowledge 6(1):79-94. https://nopr.niscpr.res.in/handle/123456789/853
- FriedEye "Fermented Soybean - A delicacy of North Eastern region" https://www.friedeye.com/fermented-soybean-a-delicacy-of-north-eastern-region/
- Das R, Tamang B (2026) Metagenomic insights reveal β-glucosidase-producing lactic acid bacteria from Miyamikhri with taxiphyllin degradation potential. Scientific Reports 16:13697. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13125572/
- Tamang JP (2022) Dietary culture and antiquity of the Himalayan fermented foods and alcoholic fermented beverages. Journal of Ethnic Foods 9:30. https://doi.org/10.1186/s42779-022-00146-3
- Kharnaior P, Das M, Tamang JP (2023) Therapeutic and Anti-Thrombotic Properties of Some Naturally Fermented Soybean Foods of the Eastern Himalayas. Fermentation 9(2):91. https://www.mdpi.com/2311-5637/9/2/91
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(U Nissor Singh 1906、Bose 1967、Bilasini Devi ほか 1980、Tamang 2001、Hauzel 2003、Tamang ほか 2009 の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151
このページは、各納豆のページで開いて確かめた出典から、2026年10月15日にまとめました。料理・製法は記録の紹介です。

