トゥアナオを一言でいうと
タイ北部とミャンマーのシャン州で作られてきた、糸を引く大豆の発酵食品です。名前はタイ語で「腐った豆」という意味です(英語版ウィキペディア「Thua nao」)。できたてをバナナの葉に包んで蒸したり焼いたりして食べるほか、つぶして薄い円盤にして干し、料理の味付けに使います。
| どこで | タイ北部(ランパーン・ランプーンなど)・ミャンマー シャン州 |
|---|---|
| 何から | 大豆(つぶす時に塩・にんにく・唐辛子などを混ぜる) |
| 寝かせる日数 | バナナの葉を敷いた竹かごで3〜4日 |
| 主な菌 | Bacillus subtilis |
| 食べ方 | 葉に包んで蒸す・焼く/干した円盤(トゥアナオ・カップ)を料理に |
食べ方: 円盤をあぶって、トマトとひき肉のディップに
米国の料理誌『Saveur』は、チェンマイ郊外の店トン・カムの料理を、オースティン・ブッシュの本『The Food of Northern Thailand』から引いて、トマトとひき肉のディップ「ナムプリック・オン」の作り方を載せています(4人分)。干したトゥアナオの円盤を、最初にあぶって粉にするのが特徴です。
材料
- 干したトゥアナオの円盤 1枚(約15g)
- 干した唐辛子 12本
- にんにく 8かけ
- こしていない魚醤 大さじ3・油 大さじ2
- ミニトマト 25個・トマト 1個
- 豚ひき肉 約170g
- 塩・青ねぎ・香菜
作り方
- トゥアナオの円盤を、油をひかないフライパンで約2分、香ばしく色づくまであぶり、すり鉢で粉にする
- 唐辛子を中弱火で約10分から煎りし、すり鉢でつぶす。にんにくの半分と魚醤を加え、細かいペーストにする
- 中華鍋に油を熱し、残りのにんにくをつぶした物を炒め、唐辛子のペースト・トマト・ひき肉を入れて約10分炒める
- 水1カップを加えて10〜12分煮る
- トゥアナオの粉を大さじ2入れ、水気がほぼなくなるまで8〜9分煮つめ、塩で味をととのえる
- 冷まして青ねぎと香菜をのせ、生や蒸した野菜、豚の皮の揚げ物、もち米と
2023年の論文(Microorganisms 誌)は、タイ北部では、バナナの葉で包んだできたての物から、つぶして干した板状の物(トゥアナオ・カップ)まで、いろいろな形で売られていると書いています。呼び名も民族ごとに違い、シャンの人々はトゥアナオ、カレンの人々はトー・ノー・アウ、ラワの人々はクームと呼びます。
作り方の記録: 1970年、ランパーンとランプーンの村
1970年、タイの応用科学研究公社(ASRCT)の Sundhagul ほかが、タイ北部の村の作り方を記録しました(Soyinfo Center の要約)。魚の少ない村で、魚の発酵食品の代わりに作られていたことが、調べるきっかけでした。
- 乾いた大豆1〜2kgを洗い、たっぷりの水で、指で簡単につぶれるまで3〜4時間ゆでる。
- 湯を切り、バナナの葉を敷いた竹かごに移し、上もバナナの葉でおおう。
- 部屋の温度で3〜4日寝かせる。昼に日なたに置くか、暖かい所に置くと、約2日に縮まる。
- 豆がやわらかくなり、指で軽くつぶすとペーストになり、ねばねばした透明な物におおわれて、アンモニアのにおいがすればできあがり。カビだらけの物、すっぱい・腐ったにおいの物は失敗。
- 軽くつぶし、塩と、ときにはにんにく・玉ねぎ・赤唐辛子をすり混ぜる。少しずつバナナの葉に包み、蒸すか直火で焼いてから売ったり食べたりする。
- 長く持たせる時は、直径約2.5〜4cmの玉にして押しつぶし、薄い円盤にして天日で干す。干した物は何か月も持つ。
菌の研究
1970年の調査は、発酵を起こしているのが枯草菌(Bacillus subtilis)だと突き止め、2つの株を取り出しています。2023年の論文は、タイ北部の3つの言語の集団の発酵大豆を比べ、どれも Bacillus の仲間がいちばん多かった(細菌の49.5〜86.8%)と報告しました。2025年の論文(Foods 誌)は、3日間の発酵の中で、菌と中の成分がどう変わっていくかを、遺伝子と成分の分析を組み合わせて追っています。このサイトでは、体への効き目は書きません。
本では
本『世界の納豆アトラス』では、東南アジア山地の仲間の1つとして、21番目に置いています。
出典
- Saveur「Tomato and Ground-Pork Dip (Nam Phrik Ong)」(Austin Bush『The Food of Northern Thailand』より) https://www.saveur.com/tomato-and-ground-pork-dip-recipe/
- Bacterial Communities in Lanna Fermented Soybeans from Three Different Ethnolinguistic Groups in Northern Thailand (2023) Microorganisms. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10056180/
- Insights into Microbial and Metabolite Profiles in Traditional Northern Thai Fermented Soybean (Tuanao) Fermentation Through Metagenomics and Metabolomics (2025) Foods. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12428203/
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.564 Sundhagul ほか 1970 の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151
- Wikipedia "Thua nao" https://en.wikipedia.org/wiki/Thua_nao
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
