ペポッを一言でいうと
ミャンマー北部の、糸を引く大豆の発酵食品です。名前は pe poke、pepok、pè bok、pe-bout など、いくつもの書き方があります。英語版ウィキペディアの「Thua nao」の記事によると、ビルマ語の pè bok は、タイ語のトゥアナオと同じく「腐った豆」という意味です。そのまま炒めておかずにする食べ方と、塩と唐辛子を混ぜて平たく干し、調味料にする食べ方の2つがあります。
| どこで | ミャンマー北部(シャン州など) |
|---|---|
| 何から | 大豆(干す時に塩・唐辛子を混ぜる) |
| 寝かせる日数 | 葉で包んで暖かい所に3〜5日 |
| 主な菌 | Bacillus の仲間(日数で顔ぶれが変わる) |
| 食べ方 | おかず・揚げ物/干して調味料(ペー・ンガピ) |
食べ方: おかず、揚げ物、そして「大豆のンガピ」
2021年にミャンマーのマンダレー大学とインドのシッキム大学の研究者がまとめた論文(Tamang ほか)は、ペポッの食べ方を2つに分けています。
- できたてをすぐ食べたい人は、ビルマ風のおかずや揚げ物にして、炊いた米と食べる。インドと国境を接する北西部に多い。
- タイと国境を接する北東部では、できたてをつぶして平たい煎餅の形にし、天日で干す。タイ北部のトゥアナオとよく似ている。干す時に塩と唐辛子を混ぜることもある。
干した物の呼び名がおもしろいところです。英語版ウィキペディアの「ンガピ」の記事によると、ンガピはミャンマーの魚やえびの塩辛のことですが、シャン州の高地では大豆の発酵食品からンガピを作り、「ペー・ンガピ(Pè ngapi)」と呼びます。
Although lacking fish or prawn products, it is called ngapi.
(魚もえびも入っていないのに、ンガピと呼ばれる)
ペー・ンガピは味付けにも、食卓の薬味にも使い、カレーにすることもあると書かれています。
ミャンマーの料理の本『Burma: Rivers of Flavor』(2012年)を書いたナオミ・デュギッドは、家で作る発酵大豆のペーストの作り方を載せています。大豆約230gをよく洗い、たっぷりの水でやわらかくなるまで約3時間ゆで、湯を切ってかごに移して寝かせます。デュギッドは、知り合いのトゥアナオの作り手はみな、米袋や竹・わらのかごで寝かせているので、自分もかごを使う、と書いています。
作り方の記録
2021年の論文が書いている昔ながらの作り方です。
- 大豆を一晩水につけ、水を切る。
- ゆでて、葉で包む。
- 暖かい所に置いて、3〜5日、自然に発酵させる。
- 干す物は、つぶして塩と唐辛子を混ぜ、平たい形にして天日で干す。
2010年の永井・Tamang の総説(Soyinfo Center の要約)も、葉で包んで2〜4日寝かせ、塩と唐辛子でつぶして円盤の形にのばして干し、調味料にするか、あぶって食べると書いています。
発酵の日数で変わる菌
2021年の論文は、3日・4日・5日寝かせた物と、天日で干した物を比べました。中の生き物の99%は細菌でした。
- 3日と4日の物では Bacillus thermoamylovorans が多い。
- 5日の物では Ignatzschineria larvae が多い。
- 干した物では Bacillus subtilis が多い。
- 見つかった Bacillus の仲間は172種。pH は 7.6〜8.7。
同じ「ペポッ」でも、何日寝かせるか、干すかどうかで、中の菌の顔ぶれが入れ替わることになります。このサイトでは、体への効き目は書きません。
記録に残るまで
- 1985年 — 米国の新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記事が、大阪の国立民族学博物館の吉田集而の「納豆の三角形」の説を紹介した。日本・インドネシア・インドとビルマの国境を角にした三角形の中で、似た大豆の発酵食品が食べられているという説で、ビルマのシャン州の「ペボウ(Pe-bout)」も挙げている。Soyinfo Center は、これを「Pe-bout」に触れた最も古い文書としている。
- 2001年 — シッキムの Tamang が、キネマの近い仲間として「ミャンマーの pe-poke」を挙げた。
- 2008年 — 日本の『納豆の科学』(木内幹・永井利郎・木村啓太郎 編)にTanaka T. の書いた「Pepok」の項が立った。
本では
本『世界の納豆アトラス』では、東南アジア山地の仲間の1番目として、19番目に置いています。
出典
- Tamang JP, Kharnaior P, Pariyar P, Thapa N, Ni Lar, Khin Si Win, Ae Mar, Nyo Nyo (2021) Shotgun sequence-based metataxonomic and predictive functional profiles of Pe poke, a naturally fermented soybean food of Myanmar. PLoS ONE 16(12):e0260777. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8682898/
- Wikipedia "Thua nao" https://en.wikipedia.org/wiki/Thua_nao
- Wikipedia "Ngapi" https://en.wikipedia.org/wiki/Ngapi
- Naomi Duguid (2012) Burma: Rivers of Flavor「Fermented Soybean Paste」(ckbk の紹介ページ) https://app.ckbk.com/recipe/burm54139c01s001ss001sss003r009/fermented-soybean-paste
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.1100 Martin 1985、No.1719 Tamang 2001、No.1876 田中 2008、No.1907 Nagai & Tamang 2010 の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
