細菌型の豆豉を一言でいうと
豆豉(トウチ)は、中国で古くから作られてきた発酵大豆の総称です。多くはカビで発酵させますが、その中に、わらや布で包んで枯草菌で発酵させる「細菌型」があります。日本の納豆に近い作り方で、違いは途中で塩を入れることです。
| どこで | 中国(四川・雲南など) |
|---|---|
| 何から | 大豆(発酵の途中で塩を入れる) |
| 主な菌 | Bacillus 属(枯草菌の仲間) |
| 食べ方 | 調味料として炒め物・蒸し物に少し |
| 仲間 | 水豆豉(細菌型の代表例) |
食べ方: ご飯のおかずではなく「味の素」
英語版ウィキペディアは、豆豉は納豆やテンペと違い「調味料としてだけ使い、たくさん食べる物ではない」と書いています。塩が強いからです。代表的な料理は次の3つです。
- 豉椒排骨 — スペアリブを豆豉と唐辛子で蒸す
- 豆豉鯪魚 — 揚げた魚を豆豉と合わせる(缶詰でも売られている)
- 麻婆豆腐 — 材料の1つとして入る。ほかに魚、ゴーヤや葉物の炒め物にも
中国の家庭料理を英語で伝える Omnivore's Cookbook は、使い方のこつを2つ挙げています。
- にんにく・しょうが・唐辛子と一緒に油で炒めて、濃い「黒豆ソース」にしておくと、どの料理にも足せる
- 塩が強いので、使う前に軽く水で洗うと塩気を減らせる
同じサイトは、「発酵した豆」という言葉は国によって指す物が違い、日本では納豆のことになると注意しています。味は、塩気に加えて、ブルーチーズや味噌に似たにおい、少しの苦みと甘みがあるそうです。
豆豉には4つの型がある
英語版ウィキペディアは、豆豉を、カビで作る型(Aspergillus 型・Mucor 型・Rhizopus 型)と、細菌で作る型(ふつうは Bacillus 型)に分けています。よく見る黒い豆豉は、煮た黒豆にカビを生やしてから塩を入れ、さらに寝かせて作ります。
1986年、米国農務省の研究所の Wang と Fang は、中国の発酵食品の歴史をまとめた論文で、細菌型を「水豆豉(shui-tou-shi)」と呼び、作り方を次のように書きました。
- 大豆を洗って水に浸し、柔らかくなるまで煮る
- 布袋に入れ、わらをかぶせる
- 25〜30℃で1〜2日置くと、豆が粘る物でおおわれる。出来の良し悪しは粘りで見る
- 刻んだしょうがと塩を混ぜ、瓶に固く詰めて1週間寝かせる
この記録を収めた Soyinfo Center は、「塩を入れる前までは日本の納豆とほぼ同じ物だろう。塩を入れるので、豆豉と納豆の中間の形に見える」と書いています。
菌の研究: 細菌型でもカビは混じる
2024年12月に発表された、中国・晋中学院の研究(PMC11717030)は、細菌型の豆豉が発酵する間の菌の移り変わりを調べました。多かった細菌は Bacillus・Enterobacter・Weissella、カビでは Aspergillus などでした。細菌型と呼んでも、実際の発酵には細菌とカビが一緒にいる、ということです。においのもとになる物質は110種類見つかっています。
記録: 大豆で作った最も古い食べ物
英語版ウィキペディアによると、発酵させた黒豆は、大豆から作った食べ物として最も古く知られている物です。中国南部の馬王堆1号漢墓には、紀元前165年ごろ、名前を書いた豆豉が納められていました。墓は1972年に初めて開けられています。紀元前90年に書かれた司馬遷の『史記』にも、塩辛い発酵大豆が大事な品物として出てきます。
本では
本『世界の納豆アトラス』では、細菌型の豆豉と水豆豉を別の項目に立て、2つが重なっている可能性も書いています。
出典
- Wikipedia "Douchi" https://en.wikipedia.org/wiki/Douchi
- Omnivore's Cookbook "Fermented black beans (豆豉, Dou Chi)" https://omnivorescookbook.com/pantry/fermented-black-beans
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.1201 Wang HL, Fang SF 1986 "History of Chinese fermented foods" の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151
- Characterization of Microbial Community and Flavor Compounds in Traditional Fermented Douchi Using HTS and HS-SPME-GC–MS (2024) Food Science & Nutrition. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11717030/
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
