腊八豆を一言でいうと
中国・湖南省でよく食べられてきた発酵大豆です。煮た大豆をいったん発酵させ、塩・しょうが・唐辛子・酒などを混ぜて瓶で寝かせます。冬に作る物で、湖南の人が肉や魚を漬けるのと同じ季節に、大豆も漬けてきました。作り方は家や工場によって幅があり、わらで糸を引かせる作り方と、カビで作る作り方の両方が記録に残っています。
| どこで | 中国・湖南省 |
|---|---|
| 何から | 大豆(2回目の発酵の前に塩・しょうが・唐辛子・酒を混ぜる) |
| 菌 | わらで作ると糸を引く。研究や工場ではカビ(ケカビ・クモノスカビ・コウジカビ)を使う例が多い |
| 食べ方 | 豚肉と炒める・干し肉や干し魚と蒸す・ご飯のおかず |
食べ方: 湖南の「ご飯が進む」味
台湾のニュースサイト「関鍵評論網」の湖南料理の連載(筆者: 鞭神老師)は、腊八豆を湖南料理の中で次のように紹介しています。
湖南人除了在立冬之後醃肉醃魚之外也醃黃豆,稱為臘八豆。
(湖南の人は、立冬を過ぎると肉や魚を塩漬けにするほか、大豆も漬ける。これを腊八豆と呼ぶ)
- 腊八豆炒肉 — 豚肉と炒める。連載が「最も代表的で、手軽な料理」と書く食べ方
- 腊魚腊肉蒸腊八豆 — 干した魚や肉と一緒に蒸す。肉の脂と塩気が豆に移る
連載は、塩気・香り・辛さのある湖南料理は、もともと「ご飯を進ませるため」の料理だと結んでいます。腊八豆も、その真ん中にある味です。
作り方: わらで、わらなしで、納豆を種に
海外の中華料理の掲示板 r/chinesefood(Reddit)に、湖南の腊八豆を3通りで作った人の記録があります(2020年ごろの投稿)。
材料
- 乾燥大豆 500g(一晩水に浸す)
- わら(稲わら。麦わらでもよい)
- 市販の納豆 1パック(3つ目の作り方だけ)
- 度数の高い米の酒 25g
- 塩 50g・おろししょうが 100g
- 粉唐辛子 30g・花椒の粉 10g(好みで)
作り方
- 膨らまなかった豆を除き、指でつぶせるまで煮る。煮すぎない
- 水を切って冷まし、目の細かい袋に入れ、清潔な布で包む
- 【わらで】鍋にわらを敷き、包んだ豆をのせ、上もわらで覆ってふたをする。20〜25℃で3日以上
- 【わらなしで】包んだ豆を鍋に入れ、同じように置く。最長6日
- 【納豆を種に】43℃まで冷ました豆に市販の納豆を混ぜ、包んで約35〜38℃で22〜24時間
- 発酵した豆に調味料を混ぜて消毒した瓶に詰め、冬なら1〜2週間寝かせる。冷蔵庫に移す時にごま油を足してもよい
投稿者によると、わらで作った物は糸を引き、表面に白〜ベージュの細かい毛のようなものが出ることもあります。わらなしでは「腊八豆らしい糸」はあまり出ません。苦みが出たら発酵の失敗の印です。わらで作る作り方と、納豆を種にする作り方が、糸を引く腊八豆になったそうです。
菌の研究: カビで作る腊八豆
中国の研究では、腊八豆はカビで作る物として扱われることが多くあります。
- 2005年 — 湖南農業大学の周傳雲らは、醤油用のコウジカビ(Aspergillus oryzae)を選び直して腊八豆を作った。32〜35℃で48時間の前発酵、塩・酒・しょうがを混ぜて10〜15日の後発酵で、ケカビで作る腊八豆や昔ながらの作り方より出来が良く、作る期間はおよそ1か月短くなったと報告している。
- 2007年 — 湖南科技学院の夏岩石らは、ケカビ(Mucor)とクモノスカビ(Rhizopus)を7対3で混ぜて腊八豆を作り、うま味のもとになるアミノ酸の量が増えたと報告している。
英語の記録でも、1986年に米国農務省の研究所の Wang と Fang がまとめた中国の発酵食品の歴史は、「La-pa-tou(ケカビで発酵させた豆)」を挙げています。わらで糸を引かせる家の作り方と、カビで作る作り方の両方が、同じ「腊八豆」の名前で呼ばれている、ということです。
本では
本『世界の納豆アトラス』では、東アジアの5種の5番目に置き、わらで作る記録を中心に紹介しています。
出典
- 鞭神老師「湘菜兵法全攻略(中):臭豆腐的由來,還有毛澤東最愛的毛氏紅燒肉」関鍵評論網 https://www.thenewslens.com/article/85603
- u/bighungrybelly "Made fermented soybeans (laba dou/腊八豆), a traditional fermented food commonly consumed in the Hunan province." r/chinesefood, Reddit https://www.reddit.com/r/chinesefood/comments/hlywhy/
- 周传云, 谭周进, 蒋立文 (2005) 利用米曲霉制作腊八豆的研究. 食品科学 26(1):134-137. https://www.spkx.net.cn/CN/Y2005/V26/I1/134
- 夏岩石, 夏延斌, 蒋立文 (2007) 腊八豆生产菌株的选育. 现代食品科技 23(2):16-19. https://xdspkj.alljournals.cn/xdspkj/article/abstract/20070205
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.1201 Wang HL, Fang SF 1986 "History of Chinese fermented foods" の要約) https://www.soyinfocenter.com/books/151
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
