日本の納豆を一言でいうと
蒸した大豆に納豆菌をつけ、温かい所で一晩ほど置いて作る、糸を引く大豆の発酵食品です。塩は入れません。世界の納豆の仲間を並べる時の「ものさしの原点」で、このサイトのほかの27種は、どこが日本の納豆と同じで、どこが違うかで読むと分かりやすくなります。
| どこで | 日本全国(茨城・東北・北海道などに産地) |
|---|---|
| 何から | 大豆(塩は入れない) |
| 主な菌 | 納豆菌(Bacillus subtilis の仲間) |
| 食べ方 | ご飯にのせる・納豆汁・和え物 |
| くわしく | 日本の納豆(粒・ひきわり・五斗納豆・干し納豆・地域の納豆・新商品) |
食べ方: ご飯の上だけではない。山形の「納豆汁」
農林水産省の「うちの郷土料理」は、山形県の冬の家庭料理として納豆汁を紹介しています。食材が少ない冬を越すための保存食として、納豆を家で作ることが珍しくなかった土地の料理です。
納豆をすり鉢で粒が見えなくなるまでよくすりつぶしてとろみをつけ、汁に馴染ませるのが特徴。
材料(5人分)
- 納豆
- 豆腐・油揚げ・こんにゃく
- いもがら(からとり芋の茎を干したもの)
- 山菜・きのこ
- ねぎ・せり・味噌
作り方
- 納豆をすり鉢でよくすりつぶす
- いもがらをぬるま湯で戻し、1cm角に切る。豆腐・油揚げ・こんにゃくも1cmのさいの目に
- だし汁でいもがらを煮て、柔らかくなったら残りの具を入れる
- 最後に豆腐を入れ、味噌で少し濃いめに味をつける
- 火を止めて納豆を溶かし入れ、沸騰直前まで温める
- ねぎとせりを添えて、熱々を
こつは、かき回しすぎないこと。粘りが出て滑り、すりつぶしにくくなるので、豆を1粒ずつつぶすようにします。ご飯にのせて食べる納豆とは別の、「糸を消して、とろみに変える」食べ方です。世界の納豆の多くが、実はこちらの側(火を通して、汁や煮込みにする)に入ります。
納豆菌は、枯草菌の中の「ひとかたまり」
2011年、Kubo ほか6人の研究者が、納豆を作れる株とそうでない株を遺伝子で比べました。結果は、納豆を作る株が、枯草菌(Bacillus subtilis subsp. subtilis)の中で、ぎゅっと固まった1つの群れを作っているというものでした。
natto-fermenting strains formed a tight cluster within the B. subtilis subsp. subtilis group.
(納豆を作る株は、枯草菌の中で、まとまった1つの群れを作っていた)
群れの中には、遺伝子の並びがまったく同じ株がたくさんありました。もう1つの発見は、ビオチン(ビタミンの一種)を自分で作れない性質が、納豆を作れることと強く結びついていたことです。糸のもとのポリグルタミン酸を作る力が、遺伝子の動く断片によって不安定になる仕組みも書かれています。
記録に残るまで: わらから、容器へ
- 1894年 — 東京帝国大学の矢部規矩治が、英語で納豆の作り方と成分を書いた。大豆を5時間ゆで、わらで包み、温めた地下の室に24時間置く。Soyinfo Center は、これを作り方を詳しく書いた最も古い英語の文書としている。納豆を「vegetable cheese(植物のチーズ)」と呼んだのもこの論文で、Soyinfo Center は「長く続いた、残念な誤った呼び名」と書いている。
- 1905年 — 沢村真が、1種類だけで良い納豆を作れる菌を取り出し、Bacillus natto と名付けた(論文の発表は1906年)。
- 1919年 — 北海道大学の半澤洵が、わらの代わりに容器を使う作り方を広めるため、容器の改良の会を作った。わらに付いている菌まかせの作り方は、衛生と品質のむらに悩みがあった、と1986年の高尾彰一の総説は書いている。
いまスーパーで買う容器入りの納豆は、この「純粋な菌+容器」の流れの先にあります。わらで包む昔の作り方は、地域の納豆のページで紹介しています。
本では
本『世界の納豆アトラス』では、日本の納豆を28種の1番目に置き、ほかの27種を同じものさしで比べています。
出典
- 農林水産省「うちの郷土料理 納豆汁 山形県」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/nattojiru_yamagata.html
- Kubo Y, Rooney AP, Tsukakoshi Y, Nakagawa R, Hasegawa H, Kimura K (2011) Phylogenetic Analysis of Bacillus subtilis Strains Applicable to Natto (Fermented Soybean) Production. Applied and Environmental Microbiology 77(18):6463-6469. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3187134/
- Shurtleff W, Aoyagi A (2012) History of Natto and Its Relatives. Soyinfo Center.(No.35 Yabe 1894、No.1178 Takao 1986 の要約と年表) https://www.soyinfocenter.com/books/151
このページは2026年10月15日に出典を開いて書きました。料理・製法は記録の紹介です。
